家庭用の圧力鍋は、2026年10月時点のメーカー公式値を換算すると、最高圧力がおおむね1.6〜2.4気圧です。「2気圧」は、仕様表の「約100kPa(ゲージ圧)」とほぼ同じ状態を指します。
ただし、仕様表のkPaは「大気圧を差し引いた上乗せ分」で書かれていることが多く、「〇気圧」とそのまま並べると読み違えます。
私自身、電気圧力鍋とガス火の圧力鍋の仕様表を並べたとき、「70kPa」と「1.8気圧」のどちらが強いのか分からず、しばらく手が止まりました。この記事では、その読み違えをほどく換算の方法と、数字を機種選びにどう使うかを順に整理します。
圧力鍋は何気圧?家庭用はおおむね1.6〜2.4気圧
結論:普通の鍋は1気圧、圧力鍋は約1.6〜2.4気圧
先に要点をまとめます。
- 普通の鍋の中は1気圧(周りの空気と同じ圧力)
- 家庭用の圧力鍋は、メーカー公式の最高圧力を換算するとおおむね1.6〜2.4気圧
- 「2気圧」は、メーカーがよく使う「100kPa(ゲージ圧)」とほぼ同じ状態
科学解説サイトimidasの連載「科学しちゃうぞ!」(サイエンスライター内田麻理香氏、2012年9月15日公開)でも、普通の鍋が1気圧なのに対し、圧力鍋は2気圧ほどの圧力をかけていると説明されています。
「2気圧=100kPa」と言い切れない理由
検索すると「2気圧=100kPa」という言い方をよく見かけます。日常の会話としては通じますが、厳密には「≒」です。
1気圧は101.325kPaなので、2気圧をそのままkPaにすると約203kPaになります。それでも「100kPa」と書かれるのは、仕様表の数字が大気圧の1気圧分を差し引いた値だからです。
仕様表の「kPa」は大気圧を足していない数字
いちばんつまずきやすいのがここです。
電気圧力鍋の仕様表では、圧力が「70kPa」「100kPa」のようにkPa(キロパスカル)で書かれるのが一般的です。この数字は多くの場合、周りの大気圧より「どれだけ上乗せしているか」だけを示した値です。
一方、「〇気圧」という表記は、大気圧を含めた「全部込み」の値で書かれることがあります。同じ鍋でも、どちらで表すかで数字の見た目が大きく変わるわけです。
2気圧は何kPa?ゲージ圧と絶対圧の換算方法
1気圧はおよそ101kPa
換算の土台は、「1気圧=101.325kPa」という物理の定義です。日常の比較なら「1気圧≒100kPa」と覚えておけば十分です。
大気圧の上に100kPaを上乗せした鍋は、中の圧力が「大気圧1気圧+上乗せ約1気圧=約2気圧」になります。これが「100kPa≒2気圧」の正体です。
メーカーのkPaは「ゲージ圧」で書かれている
大気圧を差し引いた上乗せ分をゲージ圧、大気圧を含めた全部込みの値を絶対圧と呼びます。
シロカの公式ページは、おうちシェフ SP-2DP251の使用最高圧力を「95kPaゲージ圧」、おうちシェフPRO L SP-5D152を「100kPaゲージ圧」と、ゲージ圧であることを明記しています。
反対側の書き方の例が、ワンダーシェフのガス火・IH用圧力鍋オースプラスです。公式の仕様表には、気圧の表示は大気圧の1に鍋内の圧力を足した数字だという注記があり、「80kPa」と「約1.8気圧」が同じ行に並んでも矛盾しない作りになっています。
換算の式と早見表
換算は次の一行で済みます。
気圧(全部込み)=1+(仕様表のkPa÷101.3)
2026年10月時点のメーカー公式表記をこの式で換算すると、次のようになります。
| 仕様表のkPa(ゲージ圧) | 全部込みの気圧(換算) | 公式でこの値を載せている機種の例 |
|---|---|---|
| 58kPa | 約1.57気圧 | タマハシ ET-104(調理圧力) |
| 70kPa | 約1.69気圧 | パナソニック NF-PC400、アイリスオーヤマ KPC-MA3 |
| 80kPa | 約1.79気圧 | クッキングプロ V3(高圧)、オースプラス(高圧) |
| 95kPa | 約1.94気圧 | シロカ SP-2DP251 |
| 100kPa | 約1.99気圧 | シロカ SP-MC2D151 |
| 140kPa | 約2.38気圧 | オースプラス(超高圧) |
ワンダーシェフ公式の「80kPa=約1.8気圧」「140kPa=約2.38気圧」も、この式の結果と合います。私が表を作るとき、最初にこの2つで検算したのはそのためです。
この記事の「1.6〜2.4気圧」の範囲と例外
範囲の数字がぶれないよう、ここで扱いを決めておきます。
1.6〜2.4気圧は、圧力調理を主な目的とした機種の「最高圧力」を換算した幅です。下限はタマハシ ET-104の58kPa(約1.57気圧)、上限はオースプラスの超高圧140kPa(約2.38気圧)です。
切替機種の低圧モード(クッキングプロ V3の低圧40kPaなど)と、最高圧力15kPaのタイガーの調理鍋は、この範囲の外にあります。どちらも後の節で分けて扱います。
気圧だけで書かれた機種はどう読む?東芝RCP-30Rの例
RCP-30Rは「1.8気圧/1.4気圧の切替」
kPaではなく気圧だけで圧力を書いている機種もあります。東芝の電気圧力鍋RCP-30Rは、2021年10月5日の公式発表で、圧力を1.8気圧と1.4気圧で切り替えられるとしています。
ここで迷うのが、この1.8気圧がゲージ圧なのか全部込みなのか、という点です。発表資料の仕様欄は「1.8気圧/1.4気圧」とだけあり、どちらの基準かの注記はありませんでした。
調理温度から基準を読み解く
手がかりになったのは温度です。東芝の発表では、1.8気圧で密閉して約117℃の高温で調理すると説明されています。
ワンダーシェフ公式では、オースプラスの高圧80kPa(全部込みで約1.8気圧)の調理温度が117℃です。温度が一致するので、RCP-30Rの1.8気圧は「全部込み」の書き方と読むのが自然で、ゲージ圧にすると約80kPaに当たります。
同じ考え方で、1.4気圧は約40kPaに相当します。もしこれがゲージ圧の1.8気圧(約180kPa)なら、調理温度は家庭用の範囲を大きく超えるはずなので、この読み方で矛盾は出ません。
基準が分からないときの確かめ方
私が気圧表記の機種で最初に見るのは、次の3点です。
- 仕様表の欄外に「大気圧を含む」「ゲージ圧」などの注記があるか
- 調理温度が併記されているか(117℃前後なら全部込み1.8気圧≒80kPa帯)
- 同じメーカーの別資料(取扱説明書・FAQ)にkPaでの記載があるか
温度との照合は、注記がない資料を読むときにいちばん頼りになる方法だと感じています。
15psiや1barは何kPa?海外レシピの圧力を読み替える
psi・barの換算
海外の圧力鍋レシピや輸入品の説明では、圧力がpsi(ポンド毎平方インチ)やbar(バール)で書かれていることがあります。
換算の定義は、1psi≒6.895kPa、1bar=100kPaです。これを使うと、次のように読み替えられます。
- 15psi≒103kPa(ゲージ圧)→ 全部込みで約2.02気圧
- 10psi≒69kPa → 約1.68気圧。国内の70kPa帯とほぼ同じ
- 1bar=100kPa、0.7bar=70kPa
15psi前提のレシピを70kPa帯の機種で使うには
海外レシピで「15psiで◯分」とある加圧時間を、国内の70kPa帯の電気圧力鍋に当てはめると、圧力は3割ほど低い計算になります。そのぶん火の通りは遅れる側に振れると見込んでおくのが筋です。
そこで私が選ぶ順番は、まずレシピどおりの加圧時間で一度仕上げ、硬さが残れば追加で加圧する、です。短い時間から始めても、もともと火が通りにくい条件では空振りが増えるだけだからです。
追加加圧は、圧力が抜けてふたを開け、状態を見てから行うことになります。予定の食事時間に余裕がない日は、海外レシピより国内メーカーの付属レシピを使うほうが読み替えの手間がありません。
逆に100kPa帯の機種なら
シロカ SP-MC2D151のような100kPa(ゲージ圧)の機種なら、15psi≒103kPaとほぼ同じ圧力です。海外レシピの時間を読み替える必要は小さく、そのまま参考にしやすい層だと言えます。
なぜ2気圧で約120℃になる?圧力と沸点の関係
気圧が上がると沸点も上がる
ワンダーシェフ公式の「圧力鍋のしくみ」によると、水は通常100℃で沸騰しますが、富士山の頂上では約83℃で沸騰してしまいます。
沸騰が始まると、水はその温度以上には上がりません。逆に、気圧を高くすれば沸点は上がります。この原理を使った道具が圧力鍋です。
水の分子は「押さえつけられる」と沸騰しにくい
imidasの解説は、沸騰を分子の動きで説明しています。
水の分子同士は引き合う力でゆるくつながっていて、温度が上がるとそのつながりが切れて気体になります。これが沸騰です。
周りの圧力が大きいと分子は外から押さえられているので、つながりを切るにはより高い温度が必要になります。同じ解説では、鍋の中が2気圧になると沸騰する温度は120℃で、普通の鍋より20℃高くなるとされています。
公式の圧力値と調理温度を並べてみる
メーカーが圧力と温度を両方公開している例を並べると、関係が見えてきます。
| 圧力(ゲージ圧) | 全部込みの気圧(換算) | 調理温度 | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 70kPa | 約1.69気圧 | 約115℃ | パナソニック NF-PC400 公式仕様 |
| 約80kPa | 約1.8気圧 | 約117℃ | 東芝 RCP-30R 公式発表(1.8気圧) |
| 80kPa | 約1.8気圧 | 117℃ | ワンダーシェフ オースプラス 公式 |
| 140kPa | 約2.38気圧 | 126℃ | ワンダーシェフ オースプラス 公式 |
ワンダーシェフの「しくみ」ページでも、超高圧タイプは約124〜126℃、そのほかの圧力鍋は約115〜118℃で調理すると説明されています。
圧力差は温度にするとどれくらい?
この表とimidasの「2気圧で約120℃」を重ねると、温度差の目安は次のとおりです。
- 70kPaと100kPa:約115℃と約120℃で、差は5℃前後
- 70kPaと140kPa:約115℃と126℃で、差は約11℃
仕様表では70と100の差が大きく見えますが、温度に直すとそこまで開きません。10℃を超える差が出るのは、ガス火用の超高圧と比べたときです。
標高の高い場所では、同じkPaでも温度が下がる
見落としやすいのが、住んでいる場所の標高です。
仕様表のkPaは「周りの大気圧にどれだけ上乗せするか」なので、大気圧そのものが低い高地では、同じ70kPaでも全部込みの圧力が下がり、鍋の中の沸点も平地より低くなります。
標高の高い地域で使う場合、レシピの加圧時間どおりでは火の通りが足りない可能性があります。高地での使い方は機種によって案内が違うので、取扱説明書やメーカー窓口で確認するのが確実です。
圧力鍋は気圧が高いほど早い?昇圧・減圧の待ち時間まで含めて考える
加圧中の時短効果は公式の調理例でも示されている
高い圧力が時短につながること自体は、メーカーの公開例で示されています。
ワンダーシェフの「しくみ」ページには、同社のレギュラータイプ(78kPa)の圧力鍋での調理例として、黒豆が普通鍋4時間に対して1時間45分、豚の角煮が70分に対して35分という比較が載っています。
東芝のRCP-30Rの発表でも、1.8気圧での調理例として黒豆が普通鍋の約240分に対し約60分とされています。いずれもメーカーの調理例で、レシピや量によって時間は変わります。
「kPaが大きいほど夕飯が早い」は思い込みだった
ここで、私の最初の思い込みがひっくり返りました。
仕様表を比べ始めた頃は、「kPaが大きい機種ほど夕飯が早くできる」と考えていました。ところが取扱説明書まで読むと、加圧時間の前後に必ず「圧力が上がるまでの時間」と「圧力が下がるまでの時間」が挟まっています。
メーカーの調理例が示しているのは、多くの場合「加圧を含めた調理時間」です。食卓に出るまでの時間を見積もるには、待ちの時間を別に確かめる必要がありました。
公式資料で確かめられた待ち時間の目安
取扱説明書やFAQで、昇圧や減圧の目安を数字で公開している例を集めると、次のとおりです。
| 機種(型番) | 公式の圧力表記 | 公式で確かめられた待ち時間の目安 |
|---|---|---|
| シロカ SP-2DP251 | 95kPaゲージ圧 | 昇圧3〜20分、自然減圧5〜50分(取扱説明書) |
| クッキングプロ V3 | 低圧40kPa/高圧80kPa | 圧力が上がるまで10〜30分(公式FAQ) |
| タイガー COK-A220 | 最高圧力15kPa | 減圧約5分(取扱説明書の「マニュアルうま圧」の図にある設定時間内の内訳) |
ショップジャパンの別機種クッキングプロ ベーシックの取扱説明書でも、予熱と減圧にそれぞれ10〜30分の目安が図で示されています。
なお、タイガーのCOK-A220は、後の節で取り上げるCOK-B220とは別の機種です。どちらも公式の最高圧力は15kPaで、低めの圧力で仕上げる調理鍋という位置づけは共通しています。
表から言えること・言えないこと
95kPa級のシロカ SP-2DP251は自然減圧が最大50分、15kPaのタイガー COK-A220は減圧約5分。この2機種を見る限り、高い圧力は「加圧中の時短」を生む一方で、「抜くまでの待ち」も抱え込みやすいと読めます。
ただし、減圧時間まで公式資料で確かめられたのは手元の範囲で2機種だけで、容量や食材の量でも待ち時間は大きく変わります。「圧力が高いほど必ず待ちが長い」とまでは言えません。
それでも、「加圧10分のレシピでも、食卓に出るまでは加圧以外に数十分かかる場合がある」という見当は、公式資料だけで十分につきます。
使っている人の受け止め方は二手に分かれる
通販サイトのレビューを見ていると、「加圧時間は短いのに、減圧待ちで思ったより時間がかかる」という声があります。
一方で、「待ち時間は長くても、その間コンロの前にいなくていいから楽」という受け止め方も見かけます。圧力の数字が効くのは「火の前に張りつく時間」ではなく「食材が柔らかくなるまでの加熱時間」だと捉えると、期待と実感のズレは小さくなります。
電気圧力鍋は何気圧?主要機種の圧力を公式仕様で比較
70kPa前後(約1.6〜1.7気圧)が中心の層
電気圧力鍋でいちばん多いのが、70kPa前後の機種です。値はいずれも2026年10月時点のメーカー公式表記です。
| 機種(型番) | 圧力(公式表記) | 気圧に換算 | 容量(公式表記) |
|---|---|---|---|
| パナソニック NF-PC400 | 70kPa | 約1.69気圧 | 調理容量2.6L |
| アイリスオーヤマ KPC-MA3 | 最高圧力70kPa | 約1.69気圧 | 調理容量2.0L |
| ワンダーシェフ OEDG30 | 作動圧力70kPa | 約1.69気圧 | 最大調理量約2.0L |
| ティファール CY8751JP | 70kPa | 約1.69気圧 | 容量6.0L |
| アルファックス・コイズミ LPC-T1201 | 使用最高圧力65kPa | 約1.64気圧 | 調理容量1.2L |
| タマハシ ET-104 | 調理圧力58kPa | 約1.57気圧 | 調理容量2.0L |
パナソニック NF-PC400は、公式仕様で圧力調理の温度を約115℃としています。70kPa帯は、ワンダーシェフのいう「そのほかの圧力鍋」の115〜118℃とほぼ同じ温度域だと読めます。
100kPa前後(約2気圧)を出せる層
「2気圧」に届く電気圧力鍋もあります。
| 機種(型番) | 圧力(公式表記) | 気圧に換算 | 容量(公式表記) |
|---|---|---|---|
| シロカ SP-MC2D151 | 使用最高圧力100kPa | 約1.99気圧 | 調理容量1.6L |
| シロカ SP-5D152 | 使用最高圧力100kPaゲージ圧 | 約1.99気圧 | 調理容量3.5L |
| シロカ SP-2DP251 | 使用最高圧力95kPaゲージ圧 | 約1.94気圧 | 調理容量1.68L |
| A-Stage Re・De Pot EPC01A-20 | 調理時の最高圧力83kPa | 約1.82気圧 | 調理容量1.2L |
シロカ SP-MC2D151は2026年5月28日発売で、公式ではオートメニュー数88、最大予約設定時間15時間とされています。少なくともこの1機種を見る限り、100kPa級は古い機種に限った設計ではないと言えそうです。
圧力を切り替えられる機種と、低圧設計の調理鍋
圧力の数字は「高ければ上」ではありません。あえて低めの圧力を用意している機種もあります。
- ショップジャパン クッキングプロ V3:低圧40kPa/高圧80kPa(公式)
- 東芝 RCP-30R:1.8気圧/1.4気圧の切替(公式発表。ゲージ圧で約80kPa/約40kPa相当)
- タイガー COK-B220:最高圧力15kPa(公式)
COK-B220の15kPaは、気圧に直すと約1.15気圧です。「弱い圧力鍋」と読むより、煮崩れを抑えながら低めの圧力で仕上げる調理鍋として見るのが正しいと私は考えています。
公式では満水容量2.2L、自動メニュー数43で、高圧で時短する圧力鍋とは狙いの違う道具としての仕様がそろっています。
表を作って分かった「容量と圧力は別の軸」
一覧を作ってみて気づいたのは、圧力と容量の間に決まった関係がないことです。
容量6.0Lのティファール CY8751JPが70kPaで、調理容量1.6Lのシロカ SP-MC2D151が100kPa。容量で候補を絞ってから圧力を見る二段階にしないと、表の数字に振り回されます。
アイリスオーヤマのコラムでは、1〜2人暮らしは1.5〜2.5L、3〜4人家族は3〜5L、5人以上や作り置き派は5L以上を目安にしています。この目安で候補を絞り、そのうえで圧力の欄を見るのが、私の今のやり方です。

高圧と低圧で何が変わる?向く料理・向かない料理
高圧が向くのは、硬い肉や豆など時間のかかる食材
高い圧力の恩恵が大きいのは、普通の鍋だと何時間もかかる食材です。
アイリスオーヤマのコラムでも、高圧では肉や豆類などの硬い食材が短時間でやわらかくなり、角煮などの煮込み料理に向くと説明されています。前の節で触れた2社の調理例でも、時間の差がとくに大きかったのは黒豆でした。
低圧が向くのは、形を残したい野菜の煮物
imidasの解説は、高い圧力は食品の組織を壊すことでもあると指摘しています。牛すじ肉を簡単に柔らかくできる反面、野菜の煮物は油断するとすぐ崩れる、という説明です。
東芝のRCP-30Rの発表でも、1.4気圧は煮崩れしやすい食材向けとされ、メニュー例に白米やミネストローネが挙がっています。圧力切替のある機種や、低めの圧力で設計された調理鍋の意味は、ここにあります。
茶碗蒸しは圧力鍋が得意な料理の一つ
圧力鍋は、茶碗蒸しやプリンのような蒸し料理も得意とされます。
imidasの解説によると、卵のたんぱく質が固まるのは約80℃です。普通の蒸し器では、蒸気が勢いよく出る温度と卵が固まる温度が近いため、穴があく「す」ができやすくなります。
同じ解説は、圧力鍋の中では沸点が上がるため急な沸騰が起きにくく、「す」を防ぐ細かな工夫がいらなくなると説明しています。鍋の中の温度が圧力で管理される、と捉えると分かりやすいです。
圧力切替は「作る料理が偏っていない人」向け
手動で圧力を切り替えられる機種は、豆や肉の煮込みも、野菜の煮物も一台でこなしたい人に向いています。
ガス火用でも、アイリスオーヤマのKAR-3LSは低圧60kPa/高圧100kPaの切替、ワンダーシェフのオースプラスは超高圧/高圧の切替に対応しています。
逆に、作る料理がカレーやシチュー中心なら、切替のない70kPa帯でも不満は出にくいはずです。
圧力鍋の安全は何で守られている?安全装置とPSCマーク
圧力を一定に保つ仕組みと、上がりすぎたときの逃げ道
圧力鍋は、ふたを密閉して中の圧力を上げ、設定した圧力に達したら弁やおもりから蒸気を逃がして、一定の圧力を保ちます。
そのうえで、圧力が上がりすぎたときに蒸気を逃がす安全装置や、圧力が残っている間はふたが開かないロックが設けられているのが一般的です。
何がいくつ付いているかは機種で違います。取扱説明書の「各部の名前」と「安全装置」のページを最初に読むのがおすすめです。
「家庭用の圧力なべ」はPSCマークの対象
経済産業省が所管する消費生活用製品安全法では、「家庭用の圧力なべ及び圧力がま」が特定製品に指定されています。国の技術基準に適合したことを示すPSCマークがない特定製品は、販売できません。
自治体の解説資料では、対象の例として圧力なべのほか「高圧力になる炊飯器」も挙げられています。
ただし、電気式の圧力鍋がすべて同じ扱いになるとは限りません。購入前に、本体や取扱説明書のPSCマークの表示を自分の目で確かめておくと安心です。
安全装置は「手入れ」とセットで初めて働く
安全装置があるから大丈夫、とは言い切れません。蒸気の通り道が詰まっていれば、仕組みどおりに働かない可能性があるからです。
富山・石川・福井の消費生活センターが共同で行った圧力なべのテストでも、各銘柄の取扱説明書に、使用前にノズルの詰まりを確認する、空だきをしない、といった注意が記載されていたと報告されています。
パッキンも消耗品です。シロカ SP-D131の取扱説明書では、パッキン交換の目安を6カ月〜1年としています。圧力の数字が大きい機種ほど、毎回の点検と交換部品の入手性まで含めて選ぶべきだと私は考えています。
圧力鍋の気圧は選び方にどう生かす?迷った点と今の基準
最初は「気圧」と「kPa」を同じ土俵に乗せていた
正直に書くと、調べ始めた頃の私は、ガス火の圧力鍋の「1.8気圧」と電気圧力鍋の「70kPa」を並べて、比べること自体を諦めかけていました。
換算の式を知ってからは、メーカーの表記がゲージ圧なのか全部込みなのかを確認するのが、仕様表を読む最初の作業になりました。シロカのように「ゲージ圧」と明記するメーカーや、ワンダーシェフのように注記を入れるメーカーは、その点で読み手に親切だと感じます。
圧力は「足切り」ではなく「最後の比較項目」
今は、次の順番で機種を絞っています。
1. 容量:家族の人数と作り置きの量から、調理容量で候補を絞る
2. 置き場所と手入れ:設置寸法、パッキン・弁の外しやすさを見る
3. 予約:よく作る料理が予約対象に入っているかを確かめる
4. 圧力:最後に、70kPa帯か100kPa帯か、切替があるかを比べる
圧力を最後に置くのは、70kPaと100kPaの差が温度にして5℃前後で、昇圧・減圧の待ちまで含めると総時間の差はさらに見えにくくなるからです。
ただ、豆や牛すじなど硬い食材をよく煮る家庭なら、圧力の優先順位を上げる価値はあります。
圧力以外で後から不満が出やすい点
圧力の比較に夢中になると、次の3点を見落としがちです。
- ふた開き時の高さ:タイガーの公式発表では、COK-B220が42.7cm、容量の大きいCOK-B400が50.6cm。吊り戸棚の下に置くなら、本体の高さではなくこの数字で測る
- 予約できるメニューの数:パナソニック NF-PC400の取扱説明書では、予約できる自動調理メニューは7メニュー、設定範囲は3〜15時間後
- 食洗機の可否:パナソニック NF-AC1000とシロカ SP-MC2D151は取扱説明書で食洗機不可。シャープ ホットクック KN-HW24Hのように部品ごとに可否が分かれる機種もある
機種ごとの容量や手入れの違いは、それぞれの本体レビューで掘り下げるべき内容です。この記事では、圧力を読むときにこの3点も同時に確かめておく、という順番だけ押さえてください。
向いていない人
圧力の数字以前に、次のような人は買ってから持て余しやすいと感じます。
- 平日にほとんど自炊せず、使うのが月に数回になりそうな人
- キッチンが狭く、出しっぱなしにする場所が確保できない人
- 炒め物や焼き物が中心で、煮込み料理をほとんど作らない人
なお、圧力鍋が短くしてくれるのは加熱の時間で、切る・下ごしらえする手間は残ります。そこが負担の中心なら、カット済み食材のミールキットを組み合わせる選択肢もあります。
まとめ:圧力鍋の気圧は「換算してから」比べる
圧力鍋は何気圧か、という問いへの答えは、2026年10月時点のメーカー公式値で、圧力調理を主目的とする家庭用の最高圧力がおおむね1.6〜2.4気圧です。「2気圧」は、仕様表の「約100kPa(ゲージ圧)」とほぼ同じ状態を指します。
ポイントを振り返ります。
- 仕様表のkPaは多くが大気圧を差し引いた「ゲージ圧」
- 換算は「1+kPa÷101.3」。15psiは約103kPa、1barは100kPa
- 気圧だけの表記は、調理温度と照らし合わせると基準を読み解ける
- 温度差は、70kPaと100kPaで5℃前後、70kPaと140kPaで約11℃
- 加圧中の時短とは別に、昇圧・減圧の待ちが数十分かかる場合がある
- 高圧は硬い食材向き、形を残したい料理には低圧が合う
どの圧力が合うかは、作る料理と、誰が時間を管理するかで変わります。硬い肉や豆をよく煮るなら100kPa前後の電気圧力鍋や超高圧に切り替えられるガス火用、野菜の煮物や汁物が多いなら低圧の切替がある機種や低圧設計の調理鍋、火加減を任せて帰宅時に仕上げたいなら70kPa帯でも予約と自動メニューが充実した機種、と自分の台所に当てはめてみてください。
詳しくは「高圧タイプの圧力鍋は何が違う?向いている料理と選び方」が参考になります。
よくある質問
仕様表に圧力が書かれていない機種は、どこで確認できますか?
製品ページの仕様表に「最高圧力」「使用最高圧力」「調理圧力」などの名前で載っていることが多く、見当たらない場合は取扱説明書の仕様のページを確認するのが確実です。気圧で書かれている場合は、大気圧込みかどうかの注記や、併記された調理温度もあわせて見てください。
海外の「15psiで◯分」のレシピは、70kPaの電気圧力鍋でも使えますか?
使えますが、そのままの時間では火の通りが足りない可能性があります。15psiは約103kPaで、70kPaより3割ほど高い圧力だからです。まずはレシピどおりの時間で仕上げて様子を見て、硬さが残れば追加で加圧するのが無難です。
標高の高い地域でも圧力鍋は使えますか?
使えますが、大気圧が低い分、同じkPaでも鍋の中の圧力と沸点は平地より下がります。加圧時間を延ばす必要が出る場合があるため、高地での使い方は取扱説明書やメーカーの窓口で確認してください。


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